本記事は、英語で執筆され、日本語に翻訳されたものです。翻訳にあたり、表現やニュアンス等に細かな差異が生じている可能性がございます。本記事の原文は、こちらからご覧ください。

米国特許法(35 U.S.C.)§271(g)は、「米国内で特許取得済みの製造方法によって製造された製品を権限なく米国内へ輸入し、販売の申し出をし、販売し、または使用した者は、侵害者として責任を負うものとする」と規定している。連邦巡回控訴裁判所は、Syngenta Crop Protection, LLC v. Willowood LLC, et al (Fed. Cir. Dec. 18, 2019) 事件において、35 U.S.C.§271(g)は、訴訟対象となった製造方法のすべてのステップが単一の事業体によって実行されたことを条件としているか否かを考慮した。

略式判決の申立てにおいて、ノースカロライナ州中部地区の連邦地方裁判所は、35 U.S.C.§271(g)に基づき訴訟対象となった製造方法のすべてのステップは単一の事業体により実行され、または単一の事業体に帰するべきであると判断した。連邦地方裁判所はまた、重大な事実に関する争点があると判断し、問題が裁判で問われることを許可した。陪審員は、原告Syngentaが連邦地方裁判所の§271(g)の解釈によって要求された「訴訟対象となった製造方法が単一の事業体により用いられたこと、またはそれに帰するものであること」を証明できなかったと判断した。

しかし、控訴審である連邦巡回裁判所は、先ず「法令の文言は、特許取得済みの製造方法を海外で『利用する』ことにより法的責任が生じると示唆してはいない。むしろ、焦点は特許取得済みの製造方法から生じる『製品』に関する行為にのみある」とし、次いで、「法令全体を見ると、当該文言は、特許取得済みの製造方法を海外で利用しても§271(g)に基づく責任は生じないことを明確にしているため、その製造方法が単一の事業体によって利用されたかどうかは、当該条項が侵害されたか否かの分析には関係がない」との見解により、連邦地方裁判所の判決を覆した。

控訴審において、被告Willowoodは、35 U.S.C.§271(a)に基づく単一事業体の要件(訴訟対象である方法のすべてのステップが単一の事業体によって実行される、またはそれに帰する)は、§271(g)が直接侵害の形態の1つにすぎないことから、§271(g)にも適用されるべきであると主張した。連邦巡回控訴裁判所は、これに同意せず、当該法令の別の条項、すなわち§271(f)を考慮し、もしも議会が§271(g)に基づく責任を単一の事業体により特許取得済みの製造方法が侵害された場合に限定する意図を有していたならば、議会は「そのように明確に規定したはずだ」と述べた。

またWillowoodは、§271(a)に基づく製法特許の直接侵害は訴訟対象となったステップのすべてを同じ事業体が実行することを要求していることから、§271(g)にも同じことが当てはまるとする主張の理由として、「議会は、特許権者に対し『国内の侵害者に対するものと同様の海外の侵害者に対する保護』を提供することを意図していた」と指摘した。連邦巡回控訴裁判所は、これに同意せず、§271(a)は、製造方法が製品に結び付いたかどうかにかかわらず、すべての特許取得済みの製造方法を対象としていると判断した。

一方、§271(g)は、特許取得済みの製造方法で製造された製品の輸入、販売、販売の申し出、または米国内での使用を条件としている。連邦巡回裁判所は「§271(a)と§271(g)に基づいて提供される保護の範囲が異なっていることは、2つの条項間に矛盾がないことを示している。議会は、§271(g)が『他国における特許取得済みの製造方法の使用の結果として製造された製品の米国内への輸入により発動し』、単に『そのような製造方法で製造された製品に保護の範囲が拡大する』だけであることを明確に規定している」と判示した。

この訴訟により、米国において特許取得済みの製造方法によって製造された製品の輸入または販売から生じる侵害責任について、特許取得済みの製造方法のすべてのステップを単一の事業体が実行、指示、または制御する必要はないと示されたことから、特に米国外での活動を含め、米国特許法§271(g)に基づく侵害を構成する可能性のある活動の範囲が明らかに拡大したように思われる。



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