Apple対Samsungのスマートフォン戦争、判決が差し戻される

Publication 12月 2016

本記事は、英語で執筆され、日本語に翻訳されたものです。翻訳にあたり、表現やニュアンス等に細かな差異が生じている可能性がございます。本記事の原文は、こちらからご覧ください。

2016年12月6日、スマートフォン戦争の最新局面において、SamsungがAppleの意匠特許を侵害したとの陪審員判断に基づき、Samsungに対しAppleへ3.99億ドルの損害賠償の支払いを命じた連邦巡回裁判所の審決について、米国最高裁判所は、全員一致で同審決を破棄した。Sotomayor判事による当該判決は、スマートフォンやテクノロジー業界のみならず、意匠特許を行使しようとする全ての企業に影響を及ぼす可能性がある。当該事件で問題になったのは、「特許侵害のあるスマートフォンの販売からSamsungが得た全利益」をAppleが回収する権利があるか否かである。最高裁判所は、必ずしもその権利は無いと判断した。

35 U.S.C. § 289によれば、「(権利化された)意匠特許を使用または模倣した製造品を製造または販売する者は、その総利益の範囲内で所有者に責任を負うものとする」。連邦巡回控訴裁判所は、一般消費者に対してスマートフォンの部品は別売されておらず、§289に規定されている「製造品」とはみなされないため、Samsungは侵害しているスマートフォンの販売から得た全利益について責任を負う、と判決した(訴訟経緯:Apple Inc. v. Samsung Elecs. Co., 786 F.3d 983 (Fed. Cir. 2015), cert. granted in part, 136 S. Ct. 1453 (2016), and rev'd and remanded, No. 15-777, 580 U.S. ____ (Dec. 6, 2016))。最高裁判所は、1842年の特許法と1875年にまで遡る判例法を分析し、意匠特許権者は「侵害しているデザインの使用に起因する利益または損害を示す必要がある」と判断した。裁判所は、判決の理由として、「総(利益)」とは「すべて」を意味するため、現行法の下では意匠特許侵害者は「禁じられた行為から生じる利益のすべて」について責任を負うとした(注1)。それでも、最終製品がスマートフォンのような多数の部品からなる製品である場合、総利益を計算するにあたって関連する「製造品」を見極める必要がある。

裁判所は、「物品」と「製造」の定義を分析した後、「製造品」という単語は「別売されるか否かに関わらず、消費者に販売される製品とその製品の構成部品の両方を含んでいると広義に解釈することができる」と判断した。その結果、最高裁判所は、連邦巡回控訴裁判所による「侵害しているスマートフォンの部品は、関連する製造品とはなり得ない」とする決定が§289と矛盾していると審決した。

特記すべきは、最高裁判所が、当該事件において、§289に基づく損害賠償計算の目的上、「スマートフォン全体」が適切な「製造品」になり得ないとは審決しなかったことである。それよりもむしろ同審決は、連邦巡回控訴裁判所が「製造品」を狭義に解釈し、消費者に販売される完成品のみを意味するとしたのは間違っていたことだけを示している。最高裁判所は、関連する製造品がスマートフォン自体であるか、それともスマートフォンの部品であるかの判断は行わなかった。また、最高裁判所は、§289の損害調査に関して製造品を特定するための要件の設定も行わなかった。これらの難しい問題は、現在、当該事件が差し戻された連邦巡回控訴裁判所の課題として残されている。

連邦巡回控訴裁判所が適切な製造品を特定し、どのような要件に基づいて製造品を特定するべきか指針を提供するまで、意匠特許侵害の可能性のある業者にとっては不安定な状況がつづく見込みだ。同時に、意匠特許権者は、製造品がどのように見極められるかに応じて、潜在的侵害に対する多額の損害賠償の支払いを受けることができるかもしれないという希望を持ち続けることができるだろう。


Footnotes

1   Samsungは、侵害が利益をもたらしたか否かに関する連邦巡回控訴裁判所の判決を追求しなかったため、最高裁判所はこの問題を取り上げなかった。

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