欧州単一特許(UP)及び統一特許裁判所(UPC)制度、導入へ

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Publication December 2016

This article was initially published in English and has been translated into Japanese. Due to nuances in translating into a foreign language, slight differences may exist. The original document in English is available here.

11月28日、イギリス政府はUPC協定を批准する意向を発表した。これにより近い将来、UPCの導入が明確になった。早くて2017年春頃にUPCの発足の可能性もあるが、実質的なところを考えると後半―末頃の方が妥当と見られる。UPC導入後は、欧州連合(ただし、クロアチア、ポーランド、スペインを除く)を一つの地域として扱う新しいUPC制度を使用するか、従来の欧州各国単位での保護・行使を続けるか選択が出来る。よって、欧州に特許を持つ企業は特許の出願や活用の戦略の検討を迫られる。放っておけば、第三者(競合他社など)が特許権者にとって不利な方のシステムを使って欧州特許(EP)の無効請求をするリスクにさらされる事になる。

国民投票でEU離脱が選ばれ、イギリスは欧州連合の枠組みで築かれたUPC制度に参加する適格性を問われていた。だが、UPC協定発足にはイギリスの批准が定められ、イギリス政府は他の欧州連合加盟国からUPC協定の批准をする様圧力がかかっていたと見られる。ヨーロッパを一括で運用出来る特許制度を作り上げる為に数十年の交渉と多額の費用がかけられていたからだ。

UPC協定を批准すると決めたイギリス政府はいち早く、これからのEU離脱に伴う交渉のスタンスとは無関係だと念を押した。実際、EU離脱後イギリスが引き続きUPC制度に参加出来るかは未だ決まっていない。なぜなら、理論上はEU外の国のUPC制度の参加が考えられなくもないが、それにはEU法・欧州司法裁判所の優位性を認めなければならない。これは今の政治情勢では難しいと思われる。UPCの使用・回避を検討する上で、EU離脱後のイギリスのステータス、欧州単一特許の範囲、UPCで進行中の訴訟の行方、UPCが下した命令(差し止め等)がイギリスに適用するか等、不確かな点が様々あるという要因も考慮する事を勧める。



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