裁判所、「常識」を適用してクレーム限定事項の欠如を補充したPTAB決定を却下

Publication October 12, 2016

連邦巡回控訴裁判所は、Arendi S.A.R.I. 対 Apple Inc., et al. 事件に於いて、当事者系レビュー(IPR)で審理開始決定された全クレームにつき、先行技術及び「常識」に基づく自明性(obviousness)により無効としたUSPTO特許審判部(PTAB)決定を覆した。No. 2015-2073 (Fed. Cir. Aug. 10, 2016).

挑戦された特許は、第1のコンピュータ・プログラムによって文書内で識別された特定のタイプの情報に関し、第2のコンピュータ・プログラムを使用し、当該文書にアクセスし、当該文書の外で当該特定のタイプの情報を検索する方法を特許請求の一部としている。先行技術文献としては、文書内の電話番号をテキストの種類と認識し、かつ、「アドレス帳に追加」オプションを含むコンピュータ・プログラムが開示されたものが唯一引用された。

PTABは、専門家の証言に依拠し、「アドレス帳に追加」オプションが選択された際には、重複したデータ入力を避けるため、検出された電話番号が検索されることは「常識」である、と判断した。

裁判所は、「常識及び一般的な知識は、自明性を判断するにあたり適切な要素である」と認識した一方、これを適用する際の「3つの注意点」を提供した。

  • 第一に、「常識は、通常、先行技術文献の組み合わせへの動機づけを提供するために適用され、クレーム限定事項の欠如を補充するためではない。」
  • 第二に、クレーム限定事項の欠如を補充するために常識を適用するのは「慣例としてではなく、例外」でなくてはならず、適用するにはその補充される限定事項が「格別に簡単で、非常に単純な技術」であるべきとする。
  • 第三に、常識は、「合理的分析と証拠サポートの完全なる代用として」利用されてはならず、先行技術文献から欠如する限定事項を扱う場合は特にそうである。

PTABの決定に対し上記の注意事項を適用して、裁判所はまず、PTABが常識を適用してクレーム限定事項の欠如を補充したとし、また、その欠如しているクレーム限定事項が「単に末梢的な」ものではなく、「第一クレームの重要部分である」と判断した。具体的には、限定事項であった要素がなければ、「クレームの内容が殆どなくなる」と述べた。

次に、裁判所は、PTABがクレーム限定事項の欠如を補充するために「厳密」に「根拠不十分で具体化されていない専門家による証言」に依拠したと判断した。従って、裁判所はPTABの決定を無効とした。



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